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これは未来なのだ、とアートディレクターは確信した:超短焦点4Kレーザープロジェクター「LG HU85LS」体験記

これは未来なのだ、とアートディレクターは確信した:超短焦点4Kレーザープロジェクター「LG HU85LS」体験記

自宅が映画館になる。これはもう使い古されてしまった形容詞だ。ブラウン管から液晶やPDP(プラズマ)、有機ELへ。モニターディスプレイがより大型で、より高精細のデヴァイスとなるたびに、繰り返し用いられてきた。

あるいは1990年代に入ったころから、家庭用として導入され始めたプロジェクターについても同じことがいえる。詳細は控えるが、CRT(ブラウン管方式)からLCD(液晶透過方式)、さらにデジタル技術を導入したDLPへと進化を続け、光源もランプからLEDやレーザーなどと多様化してきた。

いまから振り返って言うのはフェアではないが、かつてのそれは、映し出される映像の美しさや迫力、それに伴う没入感も、映画館とは比肩するものではなかったはず。しかしそれでも、自宅を映画館に、というマントラは半世紀にわたって唱えられてきた。誰もが思い描けて、憧れる生活様式の典型として。

要するに、近未来に訪れるであろう夢であり、ライフスタイルのひとつの到達点なのだった。

で、改めて言う。あなたの自宅は映画館になる。これなら間違いなく、超単焦点の4Kレーザープロジェクター「LG HU85LS」によって、ようやく(と言っていいと思う)われわれ消費者の長年の夢は実現することになる。

「白い立体」へ実装する

今回、この最新鋭のプロジェクターを体験してもらうべく訪れたのは、デザインオフィス「白い立体」の作業場。主宰するのはアートディレクターでグラフィックデザイナーの吉田昌平である。作業デスクの一角に「LG HU85LS」を設置すると、その形状にまずは驚いた様子。

吉田昌平 | SHOHEI YOSHIDAアートディレクター、デザイナー。1985年広島県生まれ。桑沢デザイン研究所を卒業後、ナカムラグラフを経て2016年に独立。自身のアトリエ「白い立体」を設立した。近年は写真集、書籍、カタログ等のデザインや、展覧会ビジュアルのディレクションを行う。また、紙や本をモチーフとしたコラージュ作品も制作。作品集に『KASABUTA』(WALL)、『 Shinjuku(Collage)』(numabooks)、『Trans-Siberian Railway』(白い立体)など。www.shiroi-rittai.com

「すごくシンプルですね。プロジェクターといえば、大きなレンズがあって丸っこくて、というイメージでした。個人的には流線型が苦手で、角ばっているのが好き。なのでとても共感できます。最新のデジタル機器なのに、クラシックなたたずまいもいい。液晶テレビとは比べ物にならないくらい存在感は控え目で、いろんな空間に馴染んでくれそう」

ホワイトを基調としたスチールボディはミニマルな一方で、スピーカーを内蔵した前面にはクヴァドラ社のファブリックを使用。デンマークの歴史あるテキスタイルメーカーの、品と温もりのあるライトグレーの風合いは心地よいコントラストを生む。

いざセットアップ。といっても、拍子抜けするほどイージーだ。壁から5.6cm以上離して置き、電源をコンセントにつないで、Wi-Fiにアクセスし、YouTubeやNetflixなどのアカウントを同期させるだけ。あとは投影される映像を見ながら角度を調整し、必要があれば「12ポイントエッジ調整」をするだけ。台形補正や壁やスクリーンの凹凸による歪みを目視しながら補正できる。

これは未来なのだ、とアートディレクターは確信した:超短焦点4Kレーザープロジェクター「LG HU85LS」体験記

「フラットだと思っていたけど、投影してみると、意外と壁は微妙に歪んだりしているんですね。この補正機能があるのはけっこう重要なのかも。さて何を観ようか」

4Kで120インチという贅沢と合理性

「映画は何でも。ただしビクッてなっちゃうホラー以外」。Netflixのヘヴィユーザーでもある吉田は言う。こと彼の仕事との関連でいうと、タイトルのデザインやエンドロールで使われるフォントについ目が向いてしまう。

「欧文の書体を仕事で使いますが、当然、日常生活では使いません。なのでどちらかというと、どうしても真似事になってしまう。洋画や海外ドラマのエンドロールは、実際にそれを使って生活している人たちの作品なので、フォントの流行などもすごく勉強になるんです」

とはいえ、これまで映画館のほかは、PCのモニターや自宅の小さな液晶テレビが主な視聴環境。書体の細かな部分を確認するのは難しかった。「LG HU85LS」の大画面なら無論、それも可能である。

「アルフォンソ・キュアロンの『ROMA』とか、最近のだと『7500』とか。オープニングやタイトルデザインが気になった作品を見直したいかも。色彩やコントラストもキレイなので、感じ方も違うはず。あとはサントラが好きな映画を、サントラ代わりに投影してしまうのもいいかもしれません。このプロジェクターなら明るいままでも投影できてしまうし、音質もクリアなので。贅沢ですけど」

そう。「LG HU85LS」はレーザーダイオードを採用。2,700ルーメンという明るさを実現し、部屋を暗くせずとも投影が可能である。しかも、光の三原色であるRGBそれぞれの独立した光源をもつため、色域は広く高精細となっている。つまり、プライヴェートな空間を映画館たらしめる具体的なテクノロジーがある。

もちろん、それゆえ価格は気軽なものではない。しかし同程度のサイズ(といっても80〜90インチほどがコンシューマー向けとしては最大だが)と映像のクオリティ(4K)のテレビと比べれば、軍配はこちらに上がる。そして投影しなければ、壁や場所を占有することもない(極端な話、片付けてしまえるサイズと重量だ)。つまり、極めて合理的なデヴァイスでもある。

「確かに、合理的ですね。それに大きなテレビを欲しいかというと、そういう気持ちにはなれない。テレビは、『映像を映す』という単機能のわりには空間での存在感が強い。今回、観ていて思いましたけど、未来はどんどんプロジェクターに置き換わっていくんじゃないですかね。物理的なモニターと比較すると、ますますそう思えてきます」

問われるのは視聴のクリエイティヴィティ

投影される映像にときに驚き、ときに圧倒されながら、ふと気づいたことがあった。

「目が疲れないですね。もし同じサイズのモニターを、同じくらいの距離感で観ていたら、こんなにずっとは観てられないかも」

液晶でも有機ELでも、モニターは画面が発光する仕組みである。それゆえ明るく高精細にもなるわけだが、光を直接見る行為でもあり、目への負担も大きい。一方でプロジェクションは壁やスクリーンへの投影。光によって生まれた像を見るだけなので、目は疲れにくいといわれている。

それなら、ということで部屋を暗くして、YouTubeにポストされている焚き火のムービー(4K)を投影。ノルウェーの公共放送局NRKが、2013年に試みた8時間の焚き火のみの番組がきっかけとなり、世界中に伝播。コロナ禍のステイホーム時にも静かに人気を集めた。

「これはすごい。すごく落ち着くし、ワインなんか飲んだら、もうずっと観てられそう(笑)。このプロジェクターは『どう使うか』が問われるんですね。好きな映画やドラマを見るのはもちろんだけど、この性能を引き出せる映像や使い方は、ほかにももっとある気がします。あとは、もっといい壁が欲しくなりました(笑)」

超単焦点の4Kレーザープロジェクター「LG HU85LS」。映像の美しさ、大画面の没入感、プロダクトとしての充実と合理性。それらを高次で備えたことで、プライヴェート空間は間違いなく映画館となった。というか、どうやらそれ以上である。観たい映像コンテンツを観るというだけではなく、これまでにない視聴体験を得たいと欲することになるからだ。つまり、映像と人がよりクリエイティヴな関係を結ぶ。そんな未来を予感させる。

[ LG HU85LS ]