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あの「アストロシティミニ」が縦モニターになって新登場! 「アストロシティミニ V」開発スタッフインタビュー

あの「アストロシティミニ」が縦モニターになって新登場! 「アストロシティミニ V」開発スタッフインタビュー

ありとあらゆるシューティングゲームが、「ミカド仕様」で快適にプレイ可能に

――本日はよろしくお願いいたします。まずは「アストロシティミニ V」の商品化が決定した経緯からお尋ねしたいのですが、本機は昨年発売した「アストロシティ」が好評だったから発売が決定したと考えてよろしいでしょうか?

青地氏:そうですね。「アストロシティミニ」は、世界中でたいへんご好評をいただきました。「アストロシティミニ」は、セガ設立60周年のタイミングに合わせて弊社セガトイズで作ったものですが、セガのさまざまなタイトルを収録し、エミュレーション技術も多様に使った、非常にハードルの高い商品でしたが、それを乗り越えて作られたものが皆さんに認めていただけたのでシリーズ化することができました。

アストロシティミニ

――発売はまだまだ先のお話ですが、すでに開発はスタートしているのでしょうか?

跡部氏:来夏の発売を目標に、現在のところ開発は順調に進んでいます。今回収録する22タイトルのほとんどはシューティングゲームですから、より繊細な操作感が求められると思いますので、プレーヤーの皆さんが快適に遊べる商品にしたいですね。

――開発スタッフの皆さんは、以前の「アストロシティミニ」と同じと考えてよろしいですか?

青地氏:はい。プロモーションも含めて、以前とほぼ同じ体制で企画、開発から製造までを弊社のチームが一丸となって動いています。

――当然ながら、「アストロシティミニ V」で特に気になるのはモニターを縦向きに固定したことです。なぜモニターを縦型にしようと思ったのでしょうか?

「アストロシティミニ V」では縦向きモニターに

跡部氏:そもそも、「アストロシティミニ」を最初に企画した段階で、もし皆さんからご評価をいただければ、シリーズとして出し続ける構想がすでにありました。お蔭様で、世界中の皆さんから「アストロシティミニ」がご好評をいただけましたので、シリーズ化が決定したという次第です。

<80〜90年代のアーケードゲームと言えば、やはり縦画面のシューティングは欠かせないですよね? 前回はセガ設立60周年に合わせた商品でしたので、収録タイトルは幅広いジャンルから集めましたが、今回は縦画面シューティングにほぼ特化したうえで開発してみようと思い付きました。

――商品名の「V」は、モニターの縦置きにちなんで英語の「Vertical(バーティカル)」から取ったのでしょうか?

跡部氏:仰るとおりです。実は「バーティカル」のほかにも意味がありまして、私が書いた最初の企画書の段階から、シューティングゲームでの勝利を意味する「Victory」と、火山のような熱量を保ちたいという意味から「Volcanic」もコンセプトにしています。我々自身の熱量も、企画当初からずっと冷めずに続いていますので、きっと皆さんにも熱さが伝わるものがお届けできるのではないかと思っています。

――本機の開発にはゲーセンミカドの池田稔店長をはじめ、スタッフの皆さんも協力しているそうですね。

跡部氏:はい。弊社とミカドさんとの最初の接点は、コロナ禍の最中に発売された「アストロシティミニ」を通じてできました。ミカドさんも、お店がコロナ禍で大変厳しい状況のなか、我々も60周年のミッションを進めるうえで困っていたところ、「アストロシティミニ」を通じて接点ができた結果、商品の魅力をうまく伝えることができたんです。

【高田馬場ゲーセンミカド】

――確かに、ミカドでは「アストロシティミニ」の実機を使用した実況プレイなどの配信をしていましたよね。

跡部氏:「アストロシティミニ」の発売後、お礼のご挨拶も兼ねて青地と私とでお店に伺いまして、店長の池田さんに「次回作としてこんな商品を考えてるんですけど、開発にご協力をいただけないでしょうか?」とお願いをしました。ミカドさんには、収録タイトルのセレクトですとか、セイブ開発さん(※1)などのご担当者様を紹介していただいたり、プロモーションにもご協力をいただけることになりました。

※1……セイブ開発さん:「雷電」シリーズの権利を取り扱う、有限会社セイブ開発のこと。

青地氏:当時は、まだ正式な商品名が決まっていなかったので、「アストロシティミニ1.5」という仮称でしたが、我々の思いをミカドさんにもご理解いただけて本当にありがたかったですね。

――本機の資料を拝読したところ、収録タイトルが「ミカド仕様」で遊べるとのことでした。「ミカド仕様」とは、具体的にどんなものか教えていただけますか?

跡部氏:せっかくミカドさんのご協力をいただけることになったので、ボタンの配置や連射ボタンの設定などを、お店で稼働している筐体と同じ「ミカド仕様」で遊べるようにします。同じ連射ボタンでも、タイトルによっては秒間15連射だったり30連射だったり、それぞれに最適な調整をしたうえで発売する予定です。

あの「アストロシティミニ」が縦モニターになって新登場! 「アストロシティミニ V」開発スタッフインタビュー

――それはいいアイデアですね! ゲーセンと同じ環境で遊べるようになれば、スコアアタックにもますます熱が入りそうです。

跡部氏:ミカドさんとお仕事をさせていただくのであれば、ただプロモーションだけをお願いするのは何だかもったいない気がしたんですよ。我々としても、ミカドさんには本当に感謝しておりますし、ミカドさんも弊社だけに限らず、企業案件としていろいろとお付き合いができるきっかけにつながったことも良かったのではないか、と思っております。

――それにしても今回の収録タイトルは、セガから見れば他社製品のほうが圧倒的に多いのには驚きしました……。

跡部氏:正直、あり得ないリストですよね(笑)。タイトルのセレクト時は池田さんとも相談をしまして、ほぼ当初のコンセプトどおりに収録をすることができました。

――他社とのライセンス契約を結ぶ際に、何か苦労された点はありますか?

跡部氏:中には交渉が難航したケースもありましたが、ミカドさんのご協力のおかげでセガトイズ単体では実現できなかったタイトルも収録できました。今回の「アストロシティミニ V」では、他社さんのタイトルをたくさん収録させていただくにあたり、我々のほうは一歩引いたポジションを維持したうえで、他社さんのタイトルも内包する汎用筐体である、「アストロシティ」本来の姿を再現することができればと考えております。

※2……セガのゲームセンター運営事業の譲渡:2020年12月30日、GENDA(現:GENDA SEGA Entertainment)にセガ エンタテインメントの株式を85.1%譲渡。セガブランドのゲームセンターは残ることに。

――先程もセイブ開発との交渉のお話がありましたが、ミカドの皆さんはライセンスの交渉でも大きく貢献されたんですね。本機の開発にあたり、セガ製以外の基板はミカドが所有しているものを使ったのでしょうか?

跡部氏:はい、そうです。前回は、セガ設立60周年記念プロジェクトをきっかけに、お金を使って資産をきちんと保存しようという動きが現場ではあったのですが、今回はミカドさんにご協力いただくことを前提に開発していますので、ミカドさんでお持ちの基板をお借りしました。

彩京の「戦国エース」※画面はアーケード版のものです日本物産の「テラクレスタ」といったセガ以外のタイトルも多く収録 ※画面はアーケード版のものです

――収録タイトルを絞り込むにあたり、例えばハムスターの「アーケードアーカイブス」シリーズですとか、来春タイトーが発売予定の「EGRET II mini」に収録されるタイトルと重複するケースが、おそらくあったのではないかと思われます。競合サービスと収録タイトルが重複すること自体に問題はなかったのでしょうか?

跡部氏:みんなが同じ方向を向いているのであれば、我々としても共感できる部分がありますので全然気にしていません。そこは気にならないですね。

――今回の収録タイトルの中で、青地さんが特に思い入れがあるタイトルはどれになりますか?

青地氏:「ムーンクレスタ」ですね。中学生の頃から遊んでいて、だいぶお金を飲まれましたので自分でもかなりうまくなったと思っていたのですが、この間ミカドで久々に遊んだら全然ダメで……。ほかにもタイトルの候補がいろいろとある中で、かなり古いゲームではありますがぜひ収録したいと思って選びました。

跡部氏:もし80年代以前のタイトルを収録してしまうと、もう古過ぎて「アストロシティミニ」のファン層から離れたものになってしまうだろうと思いましたが、「ムーンクレスタ」に関してはハムスターさんとプラチナゲームズさんが、新シリーズとなる「ソルクレスタ」の開発を今まさにされていますし、シリーズの系譜として「アストロシティミニ V」に入れてもいいだろうということで、ハムスターさんのご支援もいただいたうえで収録することができました。

青地氏お気に入りの「ムーンクレスタ」。ドッキングに成功すると3機合体攻撃ができることで有名な、シューティングゲームの古典的名作だ

――では、跡部さんが個人的に思い入れのある収録タイトルはどれでしょうか?

跡部氏:「レッスルウォー」です。ゴージャスなシューティングのタイトルがそろっているところに、セガマニアの皆さんには一番のツッコミどころになるだろうということで、あえて選んでみました。過去にメガドライブに移植されたことはあるのですが、アーケード版に比べてかなりデチューンされた内容でしたので、アーケード版を忠実に再現した移植版は、実は今回が初めてなんです。かなりクラシックなプロレスゲームですけど、当時としてはリッチなグラフィックスでダイナミックな演出がありますので、もしミカドさんで何かイベントをやったらきっと盛り上がると思いますよ。

【レッスルウォー】

――プロレス好きの跡部さんらしいセレクトですね! 確かに、「レッスルウォー」に登場するレスラーたちは、当時としてはサイズが大きくて筋肉とかもリアルに描かれていた印象があります。

跡部氏:そもそも、縦画面のセガのタイトルはかなり少なく、以前の「アストロシティミニ」でも縦画面のタイトルをいくつか収録しましたので、おのずと選択肢が限られる事情もあったのですが、あえて異質な「レッスルウォー」を収録したのは、縦シューばかりがズラっと並んだところに、何か1つ味付けになるもの入れたかったからなんですね。

――今、味付けというお話がありましたが、ほかのセガ製の収録タイトルをざっと見ますと、「アクションファイター」なども今となっては非常に珍しいタイトルのように思われます。

跡部氏:こちらはセガ・マークIII版以来の移植ですね。私もゲーセンで見た記憶がほとんどなく、当時のハイテクセガで1回遊んだかどうかなので確かに珍しいと思います。それから「デザートブレイカー」は、今回が全ハードを通じて初めての移植となります。

セガ・マークIII版以来の移植となる「アクションファイター」※画面は開発中のものです今回が初移植の「デザートブレイカー」※画面は開発中のものです