セルシスの「CLIP STUDIO PAINT」シリーズ、通称クリスタといえば、世界で人気のイラストレーション、漫画、アニメーションの制作ツール。使い勝手もよく高機能なため、プロの漫画家やイラストレーターの利用者が多いことでも知られています。そんな同シリーズに今年「CLIP STUDIO PAINT for Galaxy」が登場。なんと、名前の通りAndroid端末のGalaxyシリーズでクリスタが使えるようになったのです!
しかも、最新スマートフォン「Galaxy S20」シリーズをはじめ、DeXモード対応のGalaxy端末は、あのワコムの液晶ペンタブレット「Wacom One 液晶ペンタブレット 13」とも連携が可能。一体、Android端末でどれだけ快適にイラストが描けるのか? Wacom Oneをつなぐとどれくらい快適になるのか?
実際にGalaxyとWacom Oneを使って、「Galaxy版クリスタ」であるCLIP STUDIO PAINT for Galaxyを使ってみることにしました。
今回のGalaxy版クリスタの発表を受けて、最初に感じたのが「スマートフォンの画面サイズで、果たして本当にイラストが描けるのか?」ということ。そこで、最初はGalaxy S20(以下、S20)で使用してみることにしました。実際に使ってみると、指で描く関係上、どうしても一発では思った位置に線が引けません。結果はご覧のとおり。
ちなみに、今回はS20を使ったので指で描画しましたが、Galaxy Noteシリーズなら筆圧感知機能搭載のSペンが付属するため、もうすこし描きやすかったはずです。とはいえ、画面サイズの小ささはいかんともしがたいところ。Galaxy版クリスタは描画時に自動的にパレットを非表示にするなど、小さな画面でイラストを描くための工夫は随所にありますが、それでも「もう少し作業スペースがあれば」と感じます。
アプリ自体はAndroid用とは思えないほど高機能なうえ、レイヤーを10枚以上作っても驚くほどサクサク動くので、作業スペースの問題さえ解決すればかなり使えるという印象です。
そんなわけで登場するのが、13インチの液晶ペンタブレット「Wacom One」です。HDMI対応のUSB-Cアダプタを用意し、S20とWacom Oneとつなげるだけで、簡単に液晶ペンタブレットにS20の画面が表示されます。
S20をはじめとするGalaxyには“DeX”という、スマートフォンをパソコンのような使い心地で操作できる機能が搭載されています。この機能により、S20をWacom Oneにつなげるだけで、まるでパソコンのような画面表示と操作感を実現できます。
さて、ここからはWacom One上で実際にGalaxy版クリスタを使用してみます。Wacom Oneを利用してすぐに気がつくのは、やはり作業スペースが広がることによる制作効率アップ! スマートフォン上で作業していたときは、描画時はレイヤーやブラシなどのパレット類がすべて非表示にされてしまいます。ですが、Wacom Oneのように13インチの広さがあると、パレットを複数表示したままでも快適に作業できます。
イラストを描いていると、とにかく色やブラシの種類、太さの変更、レイヤーの入れ替えという作業が多いのですが、そのたびにいちいち「パレットを表示させる」一手間がないのはものすごくありがたいです。
Wacom Oneを使用すると、操作感はほとんどパソコン用のクリスタと違いがないという印象です。透明水彩やガッシュ、油絵などブラシの種類も豊富ですし、背景やトーンなど漫画制作に便利な素材も数多く用意されています。
個人的に驚いたのが、スマートフォン用アプリにもかかわらず、素材として3Dのデッサン用モデルがしっかり入っていたこと。これは、自由に姿勢やカメラ視点などを調整できる男女の3Dモデルのこと。人体デッサンが苦手な人でも、このモデルを下書きレイヤーにおけば、バランスの良い人体イラストが制作できます。
実際にWacom Oneを使ってみると、画面サイズのほかにもさまざまなメリットがあることがわかります。まず、本体に折りたたみ式のスタンドが格納されており、スタンドを開くと19度の角度をつけられます。イラストなどを描く作業は長時間化しやすいので、自然な姿勢で作業しやすい角度にできるのは嬉しいポイントです。
ちなみに、スタンドの内側には替え芯を3本入れられるスペースと、芯抜きが配置してあります。液晶ペンタブレットを使ってみるとわかるのですが、ヘビーユースしていると芯はどうしても削れてしまうので、替え芯は常に用意しておきたいところ。本体に替え芯が収納できれば、いざという時に「替え芯買っておいたはずなのに見つからない!」という失敗も防げますね(筆者はよくやります)。こういった細かな使いやすさは、さすが長年ペンタブレットを作ってきたワコムだと感じます。
さらに、非常に魅力的なのが、付属している純正ペンのほかにさまざまなペンが利用できること。なんと、有名文具メーカーのデジタルペンも使えます。
筆者は今回、ワコムが三菱鉛筆とコラボした「Hi-uni DIGITAL for Wacom」を使ってみましたが、本当にあの懐かしの「Hi-Uni」のと同じ握り心地! 木製の六角柱の形が不思議なほどピッタリと指にフィットします。あと、匂いを嗅ぐと鉛筆特有の木の香りがするのも個人的にツボです。
いままで筆者は、デジタルイラストを描くなら一定以上のスペックを持つパソコンが必要だと感じていました。もちろん、ポスターサイズなどの印刷解像度が必要な重いデータを扱う必要があり、線の筆圧を職人レベルでコントロールしたいプロには、従来通りの「高スペックPC+高スペック液晶ペンタブレット」を推奨します。ですが、趣味でイラストを楽しみたいなら、S20+Wacom Oneは十分以上の性能を発揮してくれるはずです。
最近は「スマートフォンを使いこなす若者のパソコン離れ」などと言われていますが、デジタルイラストに挑戦したいけれど、パソコンを購入するのに躊躇しているという人は、手始めにWacom Oneとスマートフォンでイラスト制作を試してみると良いかもしれません。万が一スマートフォンでは力不足だと感じた場合は、Wacom Oneをパソコンと繋げるという選択肢もあるので無駄にはなりません。
ちなみに、筆者はGalaxy版クリスタ以外にもMicrosoft Office(Android版)もS20+Wacom Oneで試してみましたが、こちらもかなり快適だったことをお伝えしておきます。Wacom Oneと繋げるだけで、スマートフォンのポテンシャルが格段にアップすることを実感させられました。
Wacom Oneを使って感じたのは、いつも使っているスマートフォンがノートパソコンレベルでパワーを発揮するということ。正直、スマートフォンでここまでゴリゴリと絵が描けるようになるとは思いませんでした。ただし、繋げられるスマートフォンには一部制限があるので、気になった人はぜひ動作確認済み機種一覧から対応製品をチェックしてみてください。
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