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子育て世代の英語教育熱は年々、高まる一方だ。2020年から小学校で英語が正式教科となり、さらに昨年から始まった大学入学共通テストでは英語の出題パターンが刷新されるなど、英語学習を取り巻く環境が大きく変化しているからだ。いまや、日本の大学ではなく海外の大学に直接進学するケースも珍しくない。そのため、子どもが学校で後れを取ったり大学受験で失敗したりしないように「家庭で英語をどう教えればいいのか」、「どうすれば英語力が伸びるのか」と悩む保護者も多いだろう。そこで参考になるのが、元イェール大学助教授で現在は英語塾の代表を務めている斉藤淳氏の著書『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』(ダイヤモンド社)だ。本稿では本書より一部を抜粋・編集して、「英語ができる子」を育てるために大事なポイントを解説します。● 自信をつけてあげることが最重要 小学生くらいになったら、英語力をスキルとして磨くことで、「ぼくは英語ができるんだ」「わたしは英語が得意なんだ」という自信を育てていくことが何よりも大切になります。 この自信を与えられるかどうかこそが、子育ての核心です。野球のバッティングを例に考えてみましょう。 1)「自分はバッティングが苦手だ」と認識する2)バッティングの改善に必要な行動を自ら取る3)実際の試合でバッティングにより結果を残す● 子どものモティベーションの源泉とは? 人はこのようなプロセスを経て、自信を手に入れていきます。なぜこれが大切かといえば、このプロセスを繰り返すことで、「自分は必要な行動を自らとって、自分を高めることができる!」という認知が強化されるからです。 「自分で自分の人生をよくできる」という手応えと言えばいいでしょうか。これを心理学の世界では自己効力感(Self-efficacy)と言います。自己効力感は学習を続けるモティベーションの源泉になります。 学習者のモティベーションをどのように維持するかは、第二言語習得(Second Language Acquisition、以下SLA)の世界でも以前から盛んに研究されています。そこでヒントになるのが、認知心理学などの分野で発達してきた自己決定理論(Self-determination Theory)です。 それによれば、人間の内的な動機づけを高めるためには、「自分にはできるという実感があるか」「自分の学習に意思選択があるか」「学習環境との関係が適切か」の3要素が欠かせません。● 自己効力感を育む3大ポイントとは? ここからもわかるとおり、子ども自身が「自力で英語力を高めていけるぞ!」という実感を持つことは、やる気を保つうえでも非常に重要なのです。 「適切な方法で継続すれば、どんな子でもしっかり結果が手に入る」という点で、英語は自己効力感を育むうえでもうってつけです。お母さん・お父さんは、ぜひその点も意識していただければと思います。 それを踏まえたうえで、心に留めておいていただきたいことが、やはり3つあります。 1)他教科の成績は英語力にはあまり関係ない2)文字での学習・論理的な理解を徐々に取り入れる3)紙にこだわらず、ITやデジタル機器を積極活用● 1)他教科の成績は英語力にはあまり関係ない まず英語は本質的には「教科」ではないということです。小学生のお子さんをお持ちの方のなかには、他教科の成績が芳しくないことに、ため息をついている人もいるかもしれません。 もしそうだとしても、英語には「大逆転」の可能性があることを覚えていてください。第二言語の力は本来、国語や算数などよりも、音楽・体育・図工のような技能に近い性質のものです。 いわゆるお勉強が苦手な子でも、真っ当な方法・環境を用意しさえすれば、英語の力は着実に伸びていきます。ですから、決してあきらめないでいただきたいのです。 ひょっとしたら英語が、お子さんの一生を左右する自信の種になるかもしれません。そのためにもまずは、「この子は英語ができるようになる!」と親御さんが信じ、なおかつ「さりげなく」応援してあげることが欠かせないのです。● 2)文字での学習・論理的な理解を徐々に取り入れる 2つめのポイントは、文字やロジックを通じた学習のウエイトを高めていくということです。といっても、主軸は音による学習です。幼児期に「音:文字=9:1」だったのを、徐々に「7:3」とか「6:4」くらいにシフトさせていくイメージです。 まだ小学生の段階では、音に対する感受性が非常に鋭いので、依然として「耳を通じた学習」の方が効率が高いことは忘れないでください。● 3)紙にこだわらず、ITやデジタル機器を積極活用 「LINEいじめ」とか「個人情報流出」のリスクが騒がれることもあって、スマートフォンやタブレットといったデジタルデバイスを子どもに与えることに、ネガティブなイメージを持っている親御さんも少なくないでしょう。 語学学習についてえば、デジタル機器を使わない選択肢はあり得ません。映像・音・文字を自在に出力できるデバイスは、SLAの発想を活かした学習法とも相性がよく、避けるべき理由がほとんどないのです。 子どもに英語をマスターさせたければ、親の世代の学習イメージを「Unlearn」(学びを捨てる)することが第一歩です。もはや「机に向かって、教科書とノートを開く」だけが英語の勉強ではないのです。 ソファにリラックスして座りながら、タブレットで発音練習をしてもよし。好きなアニメのキャラクターの英語動画を観て、セリフを真似るもよし。 ケガをするかもしれないからといって、料理で包丁を使わないというわけにはなかなかいきません。道具は結局、使う人次第です。子どもが安心して学習できるよう、セキュリティ環境などを整えたうえで、デジタルデバイスは積極的に取り入れていくべきでしょう。(本稿は、『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』より一部を抜粋・編集したものです)
斉藤淳
最終更新:ダイヤモンド・オンライン