アップル周りでAV関連の話題というと、今はやっぱり「空間オーディオ」かと思う。Apple Musicの刷新に伴う改良だが、AirPods Proなどの利用を前提とすれば、なかなか快適で楽しい体験だと思っている。
空間オーディオの課題は「楽曲数」だが、iOS 15/iPadOS 15では、それを補う機能が追加される。それが「ステレオを空間化」だ。読んで字のごとく、ステレオ音源に処理を加え、擬似的に空間オーディオ化する。
ボリュームの下のアイコンに注目。「ステレオ」楽曲なのに、右下には「ステレオを空間化」という項目がある。ここが青になっていると「オン」だこの機能を使うには条件がある。それは「AirPods ProやAirPods Maxを使うこと」だ。
この2機種にはモーションセンサーが入っており、iOS 15からは、空間オーディオの再生時にも積極的に利用する。要は頭のちょっとした移動を認識し、そのずれを音の定位に加味することで立体感を増すわけだ。
「ステレオの空間化」もこの要素を使うもので、他のヘッドフォンからは利用できない。
Dolby Atmosの「空間オーディオ」楽曲再生時。AirPods Maxを使っていると「空間オーディオ」がオンになるソニーの「WH-1000XM4」での再生時。楽曲フォーマット種別や空間オーディオに関する選択肢は表示されない一方、ステレオ音源が再生される場合であればすべての音源で「ステレオの空間化」が行なわれるようで、SpotifyやAmazon Music、はてはYouTubeですら有効だった。Apple Musicでなければ使えない……というわけではないのだ。
よく見るとApple Musicでなく「Spotify」のアイコンが。再生アプリの識別が行なわれている。ただこの場合でも「ステレオを空間化」は有効だでは、肝心の音はどうかというと、確かに「ちょっと音が広がって聞こえる」。楽曲によって向き・不向きはあるようで、元々空間的な広がりを感じやすい楽曲は「おっ」と思うくらい厚みが出るが、もちろんそうでない曲もある。元々Dolby Atmosで提供される曲に比べると広がりが弱いが、これはこれで確かに有効だ。
とはいえ不自然だと思う時もある。頭の動きをトラックすることで立体感を出している以上、大きく首を振った時に音の出方も大きく変わってしまうからだ。要は、急に右を向いたり左を向いたりすると、音の聞こえる方向も急に変わって、ちょっと違和感を覚える。この現象、Dolby Atmos楽曲をAirPods Pro/Maxで聞いた時にも似たような印象を受けるので、「ステレオの空間化」の問題ではなく、ヘッドトラッキングを使うことによる副作用なのだろう。
とはいえ、無理やり頭をブンブン振らない限り違和感は感じないので、致命的なものとはいえないだろう。
面白い要素だが、オリジナルの音ではなくなるので、もちろん「切っておきたい」と思う人もいるだろう。「ステレオの空間化」のオン・オフは、画面の右上からプルダウンして現れる「コントロールセンター」の音量バーを長押しして現れる設定で切り替えられる。前述のスクリーンショットはそこでのものだ。
なお、ここには「どのアプリからどのフォーマットで再生したのか」ということも表示されるようになった。これもちょっと便利な機能ではある。