アマゾンの「Fire HD 10」は最高のタブレット端末、ただし2万円以下で選ぶ場合に限る 製品レビュー

アマゾンの「Fire HD 10」は最高のタブレット端末、ただし2万円以下で選ぶ場合に限る 製品レビュー

品質に関して言えば、Fireシリーズは大型で外側がプラスティックであるにもかかわらず、どの製品も驚くほど頑丈である。これまでiPadの画面にヒビが入った経験が2回あるが、Fireではまだ一度もない。

30ドル(日本では3,000円)高い「Fire HD 10 Plus」を選ぶとRAM容量が1GB多くなり、ワイヤレス充電が可能になり、色の選択肢も増える。アマゾンからはテスト用に標準モデルとPlusモデルの両方が送られてきた。ほとんどの時間は大きな違いを感じなかったが、わずか30ドル(3,000円)の差なので、RAM容量が多いほうを選んだほうが将来的にも長く使い続けられるだろう。

仕事には不向きな点も

今回の改良で最も興味深いモデルはエッセンシャルセットだ。このセットにはBluetoothキーボードやMicrosoft 365のサブスクリプションなどが含まれているが、後者はFire HD 10にグーグルのソフトウェアがまったく入っていないという欠点を補うためのものである。Fire HD 10では「Google ドキュメント」も「Google スプレッドシート」も「Google ドライブ」も「Gmail」さえも使えないのだ(ただし、もともと入っているアマゾンのメールアプリからGmailを使うことはできる)。

さらに悪いことに、これらのアプリのウェブブラウザー版はFire HD 10に入っているウェブブラウザー「Silk Browser」でもロードされない。しかも、代わりとなる人気ブラウザーはどれもAmazonアプリストアでは入手できないのだ。

 アマゾンの「Fire HD 10」は最高のタブレット端末、ただし2万円以下で選ぶ場合に限る 製品レビュー

グーグルのオフィス向けアプリにできることは、すべてMicrosoft 365でもできる。しかし、同僚全員がGoogle ドキュメントを使っていて共有ドキュメントを編集する必要がある場合は問題になるだろう。Microsoft 365を1週間使ったころには、こちらのほうがグーグルのアプリよりも好きになっていた。しかし仕事でグーグルのアプリを使っている以上、長期的に使い続けることはできない。

こうした問題はあるものの、Fire HD 10は簡単な仕事なら完璧にこなせるデバイスだ。Fire OSには新たに画面分割モードが追加されている。これはマルチタスクに便利だ。仕事をするときはウェブブラウザーを片側に表示し、もう片側に「Microsoft Word」を表示して調べ物をしながらメモをとるといったことをよくしていた。このレビューもすべてFire HD 10で書いている。使い心地は非常にいい。

ただしキーボードが小さいので、手が大きい人には使いにくいかもしれない。Fire HD 10に最も近い競合製品は同じようにキーが小さい「Lenovo IdeaPad Duet Chromebook」だろう。さらに、そちらにはアマゾンが提供していないトラックパッドが付いている。個人的にトラックパッドがなくて非常に困ることはなかったが、あったらよかったのにとは思った。

キーボードには、一般的なタスクを処理するための特別なキーが多数あり、これらはカスタマイズできるので自分のワークフローに最適になるようにセットアップできる。これはいい。

こうした点は確かな一歩と言えるだろう。アップルの初代「iPad」にもトラックパッドはなかったし、アマゾンがこれから製品を改良するという望みはある(あるいは、トラックパッド付きのサードパーティー製キーボードを入手するという手もあるだろう)。個人的には問題なかったとはいえ、いまのところこのFire HD 10を主に仕事用として購入することはおすすめしない。

Fire HD 10の優秀さが発揮されるのは、アマゾンのタブレット端末に興味をもっている人なら会員になっているだろう「Amazonプライム」においてだ。プライム会員であれば何千本もの映画やアマゾンのオリジナル番組、音楽、本、ゲームなどを利用できる。Amazonプライムの特典は驚くほど豊富であり、Fire HD 10の最適な使い方はプライムのコンテンツを利用することであることに変わりはない。