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クアルコムの次世代チップ「Snapdragon 820」、詳細が明らかに

クアルコムの次世代チップ「Snapdragon 820」、詳細が明らかに

CPU、GPU、DSP、ISPなど、多数のモジュールから構成されるSnapdragon 820

Snapdragonの名を冠するシリーズの中でも、最上位のチップとなるSnapdragon 820は、CPUの設計部分から手を入れた、新しい世代のクアッドコア64bitチップセット。最大周波数2.2GHzのCPUは「Kryo」と呼ばれるカスタムチップで、これにGPUの「Adreno 530」、モデムである「X12 LTE」、カメラ制御を行う「Spectra camera ISP」、映像・音声処理を受け持つDSP「Hexagon 680」、ディスプレイ表示のためのDPU、ビデオ処理用のVPUなどが組み合わされる。

さらに、セキュリティ・認証のための「Haven」、機械学習などによる人工知能を実現する「Zeroth」、パワーマネージメントなどを受け持つ「Symphony System Manager」、機器の仕様に合わせて適切で高速な充電を行う「Quick Charge 3.0」といった各種プラットフォームも統合している。

Snapdragon 810 / Snapdragon 820仕様比較
Snapdragon 810Snapdragon 820
ベースCPUCortex A53/A57カスタムKryo CPU
動作周波数~2.0GHz~2.2GHz
GPUAdreno 430Adreno 530
モデムX10 LTEX12 LTE
4Gネットワークダウンリンク450Mbps/アップリンク50Mbps(Cat 9)ダウンリンク600Mbps(Cat 12)/アップリンク150Mbps(Cat 13)
Wi-FiIEEE 802.11acIEEE 802.11ac MU-MIMO/11ad(60GHz)
動画サポート4K/30p 8bit4K/60p 10bit
米クアルコムのマーケティングバイスプレジデント ティム・マクドノー氏

発表会の冒頭でキーノートスピーチに立った同社マーケティングのバイスプレジデント、ティム・マクドノー氏によれば、同社設立から30年となる今年、トータルで9億3200万のデバイスにSnapdragonが搭載されるに至ったと報告。新しいSnapdragon 820はすでに70を超えるデバイスへの採用が決定しているとし、Snapdragonブランドの信頼性の高さをアピールした。

クアルコムは設立30年を迎えた累計で9億3200万ものデバイスにSnapdragonが搭載通信性能は大幅にアップCPUは2倍、GPUは40%、映像・音声処理用DSPは3倍性能アップし、電力効率も向上した

クアルコムの次世代チップ「Snapdragon 820」、詳細が明らかに

Snapdragon 820では、CPUの処理性能はもちろんのこと、通信性能も大幅に進化している。4Gネットワークは下り最大600Mbps/上り最大150Mbpsをサポートし、4K動画のストリーミング再生だけでなく、アップストリーミングまでをもカバーする。Wi-Fiは、複数ユーザー同時利用でも速度を犠牲にしないIEEE 802.11ac MU-MIMOと、60GHz帯を使用し最大3Gbps以上を実現する近距離向け高速通信規格IEEE 802.11adに対応。免許不要の周波数帯・電波出力により限定されたエリア内で高速通信を行えるLTE-U(Unlicensed)や、LTEとWi-Fiを同時使用して高速化を図るLTE+Wi-Fiアグリゲーションもサポートする。

また、前世代のAdreno 430と比較して40%のパフォーマンスアップを果たしたGPU Adreno 530では、よりハイクオリティなリアルタイム3D CG処理を可能にした。オーディオ面ではヘッドフォン使用時だけでなく端末内蔵の2chスピーカーでもリアリティのあるサラウンドを実現する機能もハードウェアレベルで実装。

3D CGのリアルタイムレンダリングでは鏡面処理も軽々とこなす。布の質感などもリアルに再現

カメラにおいては、Spectra camera ISPチップが前世代の3倍の性能、10倍の電力効率を達成し、暗所撮影時の強力なノイズリダクション機能や、逆光時の明るさ・見やすさを改善する機能のほか、同時に複数の人物・顔認識を行い、それらが動き回ってもリアルタイムで追従して認識を維持する機能も備える。

動いても人物・顔認識した複数の被写体を自動で追従する暗所撮影時に発生しがちなノイズを抑制し、被写体をよりきれいな写真で残せる逆光でこれまでは黒つぶれしていたような部分でもくっきり見えるヘッドフォンに加え、端末内蔵のステレオスピーカーでもサラウンドサウンドを実現する$$Zeroth技術により、カメラで捉えているシーンを自動判定日常のユースケースでは前世代から30%も電力消費が少ないとしている

さらに、ディープラーニングをベースとした人工知能テクノロジーのZerothプラットフォームにより、カメラが捉えている内容を端末内のローカルデータベースと照合し、何を写しているのかを瞬時に判断する仕組みも備えた。これを応用することで、画像ビューワーアプリなどでは、認識したシーンやオブジェクトをタグ付けして自動分類し、例えば「人」「海岸」「文書データ」といった形でカテゴライズされた中から素早く探し出して閲覧することもできる。

以上のようなパフォーマンスアップを遂げながら、Snapdragon 820の日常使用レベルでの電力消費はSnapdragon 810から30%ほど抑えられている。こうした性能や技術は今後、スマートフォン以外のあらゆる分野の機器にも応用できることから、ティム・マクドノー氏は今後、Snapdragon 820の技術を採用したプロセッサーを搭載するデバイスとして、たとえば複数画面で高速なグラフィック処理を行うVR機器、4K解像度で周囲360度を撮影するドローン、自動運転や運転支援、インフォテイメントを実現する自動車、あるいは医療機器やセキュリティカメラといったような形で登場することになるだろうと述べた。

なお、Snapdragon 820搭載デバイスは、日本を含めワールドワイドで2016年以降順次リリースされる予定。一時期、8コア版のSnapdragon 820が登場する噂も流れたが、現在のところ検討されている事実はない。