一方、もう1つのキーワードである「トライバンド」は、もしかすると、これまでにもよく耳にしてきた言葉かもしれない。
そのトライバンドを簡単に説明すれば、Wi-Fiで利用できる電波の周波数帯が3系統あるということだ。
電波を使って通信するWi-Fiでは、基本的に同一空間中で、同一周波数を使った通信が1つしかできない。同じ周波数で複数の端末が同時に通信すると、電波が干渉してしまうからだ。
しかし、トライバンドに対応したWi-Fiルーターを利用すると、2.4GHz帯+5GHz-1帯+5GHz-2帯といったように、Wi-Fiの通信を3系統で同時に利用可能だ。
例えるなら、3車線の道路と考えるといいだろう。車線の数が少ない道路では、車の数が増えると、あっという間に渋滞してしまう。しかし、3車線の広い道路なら、この渋滞を解消できるし、増えた1車線を追い越し専用車線といった用途として使い分けることもできる。
トライバンド対応Wi-Fiルーターも、これと同じで、3系統のWi-Fiを同時に使うことができるため、例えば1系統目の2.4GHz帯にスマホやPCを接続し、2系統目の5GHz-1帯は速度を確保したいゲーミングPC専用に使い、3系統目の5GHz-2帯を中継機に割り当てて通信範囲を広げる、といった使い方ができる。
現状、販売されている一般的なWi-Fi 6ルーターには、2.4GHz帯+5GHz帯のデュアルバンド対応のものが多いため、どこかで用途が重複してしまう。
例えば、スマホやPCをつないでいる周波数帯にゲーミングPCを組み合わせると、ゲーミング環境のスループットやレイテンシーが低下したり、スマホやPCの帯域に中継機を組み合わせて通信範囲が広がっても、今度は速度が物足りないという状況に陥りがちとなる。
Wi-Fiは昨今、スマホやPC、ゲーム機はもちろんのこと、家電、センサー、AV機器、セキュリティ関連機器、おもちゃ、学習教材など、あらゆるシーンで使われている。すでに家中に溢れ返り、しかも今後さらに増えるであろうこれらのWi-Fi機器を、同時かつ高速に利用できるようにするには、もはや物理的な「車線」が多いトライバンド対応Wi-Fiルーターが不可欠というわけだ。