4列8人乗りも選べるフルサイズ・ワゴンとして登場したトヨタ・グランエースは、全長5.3m。デジタルインナーミラーが標準装備されているので、定員乗車時でも後方視界が確保される。
執筆:Hajime Aida(会田肇)編集:Tetsu Tokunaga(徳永徹)最近になって、新型車に相次いで採用されているのが「デジタルインナーミラー」だ。【写真】後付けする、デジタルルームミラー型ドラレコ【2カメラ式】 (26枚)リアウインドウ上部に設置したカメラの映像を、ルームミラー(鏡)代わりに設置した液晶ディスプレイに映し出すというもので、上級車だけでなく軽自動車にまで採用例は幅広い。一部車種では、このシステムをサイドミラーにまで広げた例もあるほどだ。これはバックミラーなどに関する国際基準が改正され、バックミラーの代わりに「カメラモニタリングシステム」の使用が可能となったことに伴うもの。日本では2016年6月に保安基準が改正されたことで可能となった。背景としては、液晶ディスプレイが解像度・輝度で十分な能力を発揮できるようになり、さらには表示もほぼリアルタイムで行われるようになったことがある。つまり、デバイスとして従来の鏡であるミラーと遜色ない表示能力に達したことが、この実現をもたらしたというわけだ。ではデジタルインナーミラーにはどんなメリットがあるのだろうか。最大のメリットは見える範囲が大幅に拡がることだ。ルームミラーはドライバー席の少し先の上部に設置されている。そのため、この位置からだと後方はリアウインドウ越しに見える範囲しか確認できない。後席に人が乗っていたり、荷物を積み上げていれば、状況次第では後方がほとんど見えなくなってしまう。その点、デジタルインナーミラーではリアウインドウ上部に設置されたカメラの映像をモニターするわけだから、車内の影響はまったく受けずに後方を表示することができる。これは、ミニバンなどボディが長めの車種では特にメリットを実感できると言っていいだろう。視野角の広さも大きなメリットだ。
三菱自の軽自動車、eKシリーズは、メーカーOPでデジタルインナーミラー(三菱自ではデジタルルームミラー)を選ぶことができる。
デジタルインナーミラーでは、映し出す範囲はカメラの画角に依存するため、仕様次第では相当に広い視界を得られる。さらにカメラのセンサーに余裕があれば、映す範囲を上下・左右に変更することも可能だ。また、仮にデザイン上、リアデッキを高くしたり、後方を絞り込んだデザインとしても後方視界は悪くならない。これは安全運転にもつながるのは間違いない。ルームミラーとしてドライバーごとに角度を調整する手間も省ける。デジタルインナーミラーとはいえ、表示される液晶ディスプレイはテレビやスマホと同じ。つまり、観る角度が変わっても、映し出される画像の向きはまったく変化しない。過去には観る角度によって画面が暗くなる反転現象が生じたが、視野角の広い液晶ディスプレイが開発されてその問題もほぼなくなった。デジタルインナーミラーではもはや角度を変える必要はまったくないと考えていいだろう。そして、もう1つ鏡では得られなかったメリットがある。それが明るさだ。デジタルインナーミラーに限らず、モニタリングシステムで使うカメラは、感度を高めれば夜間であっても昼間のように明るく映し出すことができる。もちろん、感度を上げればノイズが増えるという問題は残るが、車載用モニタリングで使われるカメラはノイズリダクションの処理能力が高められており、この問題もほぼ解決していると言っていいレベルにある。では、デメリットはないのだろうか?残念ながらデジタルインナーミラーも手放しで喜べないことがある。それは良くも悪くも、液晶ディスプレイを通して後方を確認しなければならないことに尽きる。
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