CRTディスプレイから液晶ディスプレイへの移行が本格化したのは2000年前後だったと記憶しているが、ちょうどその直後に登場したWindows XPのサポートが2014年4月9日に終了した。旧世代のPCとともに、そこへ接続された液晶ディスプレイの多くもまた、引退を余儀なくされていることだろう。
PCから入力した映像を画面に表示する――液晶ディスプレイの基本的な役割はなんら変わるものではないが、画面の大型化、ワイド化、高画質化、省電力化、疲れ目対策など、進化は続いており、また価格の下落も著しい。あまり変化のない製品カテゴリに見えて、実はなかなかホットなジャンルなのだ。
昨今はデスクトップPCに限らず、画面サイズが小さくなりがちなノートPCの外付けディスプレイとしての活用も増えており、個人ユースではゲーム専用ディスプレイ(ゲーミングディスプレイ)も注目されている。もちろん、グラフィックス用途で高い色再現性を求めるならば、高品位な外付けディスプレイが必須だ。
ノートPCの画面は大きいものでも15型クラスが主流。外付けディスプレイを足すことで、作業領域が広がり、業務効率の向上に貢献する。外付けディスプレイはデスクトップPCだけのものではないのだ本連載ではそんな多様化する液晶ディスプレイの中から、主にSOHO/中小企業での一般用途を前提とした製品の選び方を紹介していく(プロフォトや映像制作、デザイン、ゲーム、医療といった特定分野に特化したディスプレイは考慮しない)。
第1回である今回は、昨今の液晶ディスプレイのトレンドについて、法人・個人というくくりがないところで、ざっとチェックしていこう。
まずは画面まわりの仕様を見ていく。画面解像度については、かつてメインストリームだったスクエア比率(4:3もしくは5:4)のディスプレイは減少の一途をたどっており、現在ではワイド比率(16:9もしくは16:10)がその多くを占めている。
外付けのディスプレイに限らず、ノートPCやタブレットのディスプレイでもワイド化の傾向は強まっており、いまや特定業務用途を除いてスクエア比率を維持しているメジャー製品はiPadのみ、と言ってもオーバーではない状況になりつつある。
現在の主流はワイド画面のモデル(写真=左)。かつて業界標準だったスクエア画面のモデル(写真=右)はほとんど見られなくなった。写真はEIZOのFlexScanシリーズワイド比率の中には天地がわずかに広い16:10比率のモデルも存在しているが、数の上では液晶テレビと同じ16:9比率のモデルが主流で、ラインアップ上は存在していても価格は割高というケースが多い。調査会社が発表している売れ筋ランキングを見ても、上位10〜20位圏内に1つあるかないか、といったところだ。
画面解像度は、ローエンドのタブレットやノートPCでは1280×720ピクセルや1366×768ピクセルが多く、本稿で扱う外付けディスプレイでは俗に「フルHD」と呼ばれる「1920×1080ピクセル」が中心だ。これよりワンランク上で「WQHD」と呼ばれる「2560×1440ピクセル」や、後述する「4K」ディスプレイの「3840×2160ピクセル」も登場しつつあるが、中心となる解像度は1920×1080ピクセルという認識で間違いない。
主流は23型フルHD(16:9)だが、一回り大きい24.1型ワイド(16:10)の液晶ディスプレイならば、A4見開きを余裕で実寸表示できる。写真はA4用紙を実際に画面に並べて置いた例ちなみに16:10の場合は1920×1200ピクセルとなる。フルHDと比較して縦方向でたった120ピクセルの違いだが、一昔前のハイスペックなスクエア液晶ディスプレイ(1600×1200ピクセル表示)から縦解像度を維持したまま、ワイド化、高解像度化できるため、あえて16:10を選ぶユーザーも少数派ながら存在する。
画面サイズは、23型を中心に21.5〜24型前後がボリュームゾーンだ。最近では法人ユースでもスクエア型に変えてワイド型を導入するケースが増えつつあるが、横幅を維持したままワイド比率の製品に切り替えると作業面積が小さくなってしまうため、17〜19型のスクエア型から違和感なく乗り換えようとすると、ワイド型ではこのサイズに落ち着く。
各社のラインアップで最も力が入っているのもこのサイズであり、A3(A4見開き:420×297ミリ)をほぼ原寸表示できる(23型16:9では縦方向がわずかに足りず、24型16:9/16:10ならば収まる)という意味でも業務用途に適している。置き場所の関係で横幅が取れない場合や、ノートPCの外付けディスプレイとして使用する場合などは、一回りコンパクトな21.5型も有力な選択肢だ。
主な液晶ディスプレイの画面サイズ/解像度比較 | |||
---|---|---|---|
画面サイズ | 画面解像度 | アスペクト比 | 表示領域 |
21.5型ワイド | 1920×1080ピクセル | 16:9 | 477×268ミリ前後 |
22型ワイド | 1680×1050ピクセル | 16:10 | 474×296ミリ前後 |
1920×1200ピクセル | 16:10 | 474×296ミリ前後 | |
23型ワイド | 1920×1080ピクセル | 16:9 | 510×287ミリ前後 |
24型ワイド | 1920×1080ピクセル | 16:9 | 531×299ミリ前後 |
1920×1200ピクセル | 16:10 | 518×324ミリ前後 | |
27型ワイド | 1920×1200ピクセル | 16:10 | 582×364ミリ前後 |
2560×1440ピクセル | 16:9 | 597×337ミリ前後 | |
17型スクエア | 1280×1024ピクセル | 5:4 | 338×270ミリ前後 |
19型スクエア | 1280×1024ピクセル | 5:4 | 376×301ミリ前後 |
21.3型スクエア | 1600×1200ピクセル | 4:3 | 432×324ミリ前後 |
視野角などに大きく影響するパネルの種類(IPS、VA、TN)がディスプレイ選びで大きなウェイトを占めることは、以前も今も変わらない。視野角が広いほうからIPS>VA>TNの順番になるが、価格差に直結することもあり、複数台まとめて導入する法人用途では、なかなかIPSを選びにくいというのが実情だ。しかし、昨今はIPSの低価格化も進み、以前より入手しやすくなってきている。
TNパネルもかつてに比べると性能は向上しており、一括購入ともなると、こちらが選ばれることも多い。VAパネルはIPSに近い視野角とコントラスト比の高さから、主に動画/ゲーム向けディスプレイで採用例が多かったが、IPSの低価格化や性能改善が進み、最近では数が少なくなってきた。
IPS方式の液晶ディスプレイを正面、下、横から見た様子。視野角が広いため、多少角度がついても色味もコントラストも維持されている。リラックスした姿勢で見る場合や、複数人で画面を見る場合に視野角の広さを実感できるだろう。大画面だが視野角が狭い製品では、正面近くから見ても、画面の上端と下端で表示ムラが感じられるものもあるまた、黒の締まりや発色がよいなどの理由から動画視聴用途で一時期もてはやされた光沢あり(グレア)液晶は、法人ユースではほぼ対象外と言っていい。映り込みの少ない光沢なし(ノングレア)の指名買いも多いため、法人をターゲットにした製品ラインアップを持つメーカーではノングレア、個人向けに限定したメーカーは店頭での見栄えを考慮してグレア中心、という傾向は少なからずある。はからずも購入製品の候補を絞り込むのに一役買っている節がなくもない。
グレア液晶は外光やユーザーの姿がはっきり映り込むため、特に蛍光灯の多いオフィス環境では使いづらいこともある(写真=左)。ノングレア液晶ならば、蛍光灯の光が画面に入ってもここまで反射を抑えられる(写真=右)トレンドは「4K」「ブルーライト低減」「低消費電力」1|2|3次のページへ