160MHz幅での通信には非対応で処理性能も控えめ。セキュリティ機能の「TP-Link HomeCare」もUSBポートも省略されている……。
ただ、そんなスペック上の違いを気にしなければ、TP-Linkの「Archer AX10」は、なかなかお買い得な製品だ。
TP-LinkのWi-Fi 6ルーター「Archer AX10」実売価格は2020年4月時点で8000円。1万円以下の価格でありながら、最新のWi-Fi 6ことIEEE 802.11ax(ドラフト)に対応しており、最大1201Mbps(5GHz帯)での通信が可能になっている。
Wi-Fi 6における規格上の最大通信速度は9.6Gbpsで、現時点では製品ベースでも4804Mbpsに対応するルーターが最速なので、本製品の1201Mbpsはかなり物足りなく感じる。Wi-Fi 5でも上位モデルなら1733~2167Mbpsを達成しているので、額面上のスピードだけなら、これにも及ばないわけだ。
同じくTP-Link製でワンランク上(それでも安いが……)のモデルである「Archer AX50」と比べても、先にも触れた通り、いくつかスペック上の欠点が目に付く。
Archer AX10 | Archer AX50 | |
実売価格 | 8000円※1 | 1万2800円※1 |
CPU | トリプルコア、1.5GHz | クアッドコア、1.8GHz |
メモリ | 256MB | 未公表 |
Wi-Fiチップ | BCM6750 | Intel WAV654 |
Wi-Fi対応規格 | IEEE 802.11ax/ac/n/a/g/b | ← |
バンド数 | 2 | ← |
最大速度(2.4GHz) | 300Mbps | 574Mbps |
最大速度(5GHz-1) | 1201Mbps | 2402Mbps |
最大速度(5GHz-2) | ― | ← |
チャネル(2.4GHz) | 1~13 | ← |
チャネル(5GHz-1) | W52/W53/W56 | ← |
チャネル(5GHz-2) | ― | ← |
新電波法対応 | ― | ← |
ストリーム数 | 2 | ← |
アンテナ | 外付け×4 | ← |
IPoE IPv6 | ○ | ← |
DS-Lite | ― | ← |
MAP-E | ― | ← |
WAN | 1000Mbps×1 | ← |
LAN | 1000Mbps×4 | ← |
USB | ― | USB 3.0×1 |
動作モード | RT/BR | ← |
ファームウェア自動更新 | ― | ← |
HomeCare | ― | ○ |
VPNサーバー | ○ | ← |
本体サイズ | 260.2×135.0×38.6mm | ← |
※1 2020年4月15日時点。調査時10%OFFクーポンあり(価格は未適用時)
しかし、実質的にはこれで十分なのだ。
「フレッツ 光クロス」など、最大10Gbpsで通信できるインターネット回線が登場したとはいえ、WANもLANも1Gbpsが上限の環境がまだまだ多いし、Wi-Fiの通信も、一部には2402Mbpsで通信できるPCがあるものの、スマートフォンの上限は1201Mbpsが最速なのだから。
Archer AX10には、前述したセキュリティ機能のTP-Link HomeCareやUSBポートに加え、同社の一部ルーター製品でサポートされているIPv4 over IPv6(MAP-EやDS-Lite)、さらに「OneMesh」と呼ばれるメッシュ機能が搭載されない。
だが、これらを不要と割り切ってしまえば、わずかな投資で次世代のWi-Fi 6へと移行できるのが本製品の魅力だ。詳しくは後述するが、筆者宅では3階の遠くの場所でもかなり高い速度で通信できており、その性能も優秀だ。
もともとTP-Linkはコスパに優れた製品を扱うことで有名だが、本製品は、今までの製品の中でも群を抜いてコスパが高いと言ってもよさそうだ。
ライバルとなりそうなのはネットギアジャパンの「RAX20」だろうが、こちらは2.4GHz帯が574Mpbsと高いものの実売価格も1万3533円と高いので、やはりコスパでは本製品が突き抜けている。