防水&ペン対応の「Galaxy Z Fold3 5G」発表 3代目になる“フォルダブル”はモバイルの未来か(1/2 ページ)

防水&ペン対応の「Galaxy Z Fold3 5G」発表 3代目になる“フォルダブル”はモバイルの未来か(1/2 ページ)

 「フォルダブルはスマホの新しいスタンダードだ」――韓国Samsung Electronics(サムスン)のモバイル事業トップ、ノ・テムン氏はこう胸を張る。同社は11日に、フォルダブルスマホの新モデル「Galaxy Z Fold3 5G」と「Galaxy Z Flip3 5G」を発表した。特にZ Fold3は同社のフォルダブルスマホとしては3代目にもなり、「Sペン」や防水対応といった着実な進化を遂げている。

サムスンのフォルダブルスマホの新モデル「Galaxy Z Fold3 5G」と「Galaxy Z Flip3 5G」全ての写真はこちらから!

Sペン&防水対応 フォルダブルの課題を着実にクリア

 Galaxy Z Fold3 5Gは、横折りタイプのフォルダブルスマホだ。外側に縦長のディスプレイを搭載し、折りたたんだ時の内側に7.4インチのフォルダブルディスプレイを備えている。閉じた状態でも縦長のスマホとして使える上に、開いた状態では大画面のタブレットのように使えるという、2つのスタイルを同時に実現できる。

ペン入力に対応したGalaxy Z Fold3

 基本的な形状やコンセプトは、前世代モデルの「Galaxy Z Fold2」から変わっていない。ディスプレイのサイズや解像度、カメラなどの仕様面もほぼ同等だ。

 しかしそれでも大きく変わったといえるのは、筆圧検知可能な「Sペン」への対応だ。

フォルダブルながら、筆圧検知できるSペンに対応

 Sペンは「Galaxy Note」シリーズで根強い支持を集めてきたデジタルペン機能で、手書き入力やスケッチなどに活用できる。ただし、Galaxy Z Fold3が対応するSペンは「S Pen Fold Edition」か、他機種と共通で使える「S Pen Pro」の2種類のみ。また、外側の縦長ディスプレイではS Penは利用できない。

 Sペン以外に、フォルダブルスマホとしては初めての防水に対応した。IPX8相当の防水に対応し、水濡れへの耐久性を高めている。

IPX8相当の防水に対応

 耐久性も強化。「Armer Aluminum」と銘打った新開発のアルミニウム合金をフレームに採用し、耐衝撃性を高めたという。ディスプレイ外側のカバーガラスには、コーニング社製の保護ガラス「Gorilla Glass Victus」を採用。細かい傷が入りやすいという弱点があるフォルダブルディスプレイの薄型カバーガラスは、伸縮性のあるPETフィルムによって保護される。

防水&ペン対応の「Galaxy Z Fold3 5G」発表 3代目になる“フォルダブル”はモバイルの未来か(1/2 ページ)

 内部性能としては、チップセットは最新のSnapdragon 888へと更新し、メモリも12GBへ増量するなど、現行に即した。縦長の外側ディスプレイも120Hz駆動のハイフレームレートに対応し、表裏の両面のディスプレイが120Hz駆動で使えるようになった。

 Sペン、防水、耐久性はいずれも、従来のスマホに比べて複雑な構造をしているフォルダブルスマホにとって課題だった。Z Fold3はこれら課題を着実にクリアしたモデルといえる。

従来モデルでは対応できなかったワケ

 これまでのGalaxy Z Foldシリーズを見ると、複雑な構造に由来する、こうした機能の不在が同シリーズの弱点だったことがよく分かる。

 Galaxyブランド初のフォルダブルスマホとして登場したGalaxy Foldは、ディスプレイのカバーガラスが無く、プラスチックフィルムの画面は見栄えに難点があった。ガラスではないため、細かなチリやゴミで傷つきやすい問題もあった。

 第2世代のZ Fold2では、超薄型のカバーガラスを採用し、見栄えを大きく改善。細かなチリやゴミが入り込まないよう、ディスプレイ機構の設計も改良した。

 今回のZ Fold3での防水やSペンへの対応には、フォルダブルならではの技術的な困難さもあったという。防水の場合、折りたたみの可動部への防水性の確保が課題となった。サムスンは、外側ディスプレイがある面とメインのカメラユニットがある面、そしてヒンジ部の3つに分けて、それぞれ防水処理を施すことでこの課題を解決した。ヒンジ部ではディスプレイ用の通電基板の周りを防水化し、ヒンジそのものには防さび加工を施すことで、防水性と可動性を確保している。

筐体の各部位に異なる防水処理を行うことで防水性を確保

 Sペンはワコムのデジタルペン技術をベースとしているため、ディスプレイ側に「デジタイザ」というシート状の部品を搭載する必要がある。そのため、カバーガラスが存在しなかった初代Galaxy Foldでは対応が困難だった。

フォルダブルスマホにSペンのための「デジタイザ」をどう実装するかも課題の一つだった

Galaxy Fold2で極薄のカバーガラスを採用したことで、Sペン対応への障壁は1つ取り除かれたが、それでもなお課題は残った。1つは、フォルダブルディスプレイの中央部には緩やかな凹みがあること。さらに、ペン先が堅い従来のSペンでは、カバーガラスに傷を付けてしまう可能性があった。今回、ペン先が柔らかい専用のSペンを開発し、凹みの上の描画を適切に認識する技術を開発したことで、初めてSペン対応を実現できたという。

大画面ならではの使い勝手も追求

 Galaxy Z Fold3では、大画面を生かせるユーザーインタフェース(UI)の改善も進めている。その中心にあるのは「タスクバー」機能だ。タスクバーはWindowsのそれと同様に、画面上にアプリアイコンを固定表示し、最近使ったアプリへ素早く行き来できる機能だ。3つのアプリの組み合わせを登録して、同時に開くこともできる。

画面右側にあるのが「タスクバー」機能 3つのアプリの組み合わせを登録して、同時に開くこともできる

 さらに、リンク先のページを「新しいウィンドウ」に並べて表示できるなど、マルチタスク操作の使い勝手も改良されている。カレンダーやSpotifyのようなアプリはメニュー項目を小さく表示して、大画面でコンテンツを一覧できるような、表示の最適化も進めている。

 大画面ディスプレイへの最適化については、GoogleやMicrosoft、Spotify、Netflixなど米国の大手アプリベンダーと協力して進めており、Androidのエコシステムそのものへのフィードバックも行っているという。

“新しいスマホの形”を目指す野心

 Galaxy Z Fold3で改善されたポイントは、一見すると大きな変化はないようにも思える。しかし、スマホとしての使い勝手を真剣に模索したとき、どれも避けては通れない機能改善といえるだろう。

 Galaxy Z Fold3やGalaxy Z Flip3の価格設定にも注目したい。Galaxy Z Fold3は1799.99ドル(北米での販売価格、日本円で約19万8000円)と、スマホとしてはいまだ高額なものの、前世代モデルよりも200ドル安い設定となった。また、縦折りタイプのGalaxy Z Flip3に至っては、最安で999.99ドル(約11万円)と、他社のフラグシップスマホと十分競合できる価格設定となっている。

 ノ・テムン氏は発表の中で「意味のある革新」(Meaningful innovation)という言葉を使い、ユーザーに寄り添った技術革新を強調した。この革新には防水やSペン対応の他に、手に届く価格までコストを抑えるという意味もありそうだ。

 初代Galaxy Foldの登場から2年、3代目となったフォルダブルスマホにはもはや驚きはないかもしれない。一方、フォルダブルへ継続的に取り組むサムスンの姿勢からは“新しいスマホの形”を目指す野心が伝わってくる。

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