(写真:Game*Spark)
突然ですが、皆さんは『Escape from Tarkov』好きですか?超リアル系なFPSとして知られている本作、徹底的にこだわられた銃のカスタマイズ、弾薬一発毎の管理や脱水や出血、骨折といったヘルス管理。何よりも死亡時ペナルティの大きさは非常に玄人向けかつハードコアながら、圧倒的なクオリティ・唯一無二性は多くのプレイヤーを魅了してやみません。実際に作ったらどうなった……?画像で出来映えをチェックそんな本作ですが、ゲームの世界設定をベースにした実写映画が無料で観られるんです。映画の名は、ずばり「Escape from Tarkov. Raid.」。超ハイクオリティな銃撃戦がほとんど1時間ぶっ通しで続く本作ですが、銃撃戦の演出を現役の軍事部隊隊員や軍事専門家が監修しており、そのクオリティ・リアリティは既存のハリウッド大作映画を遥か高く超え、筆者が観た映画の中で一番の凄まじさです。キャラクターや演出も最高!ということでまだ観ていない方は、この記事を読んでいる場合ではありません。今すぐ観てください。観てきましたか?観てきましたね。すごかったですよね。筆者はゲームからではなく、この映画を観て『Escape from Tarkov』を購入し、Tarkov市で物資を漁り続けています。ただ、ゲームをしていない時もTarkovを感じていたい!特に映画「Escape from Tarkov.Raid.」が大好き!な筆者は映画に登場するキャラクターのフィギュアが欲しくなってきました。ですが、市販のフィギュアなんてものはありません。……無いならば、作ってしまいましょう!Fusion360で銃を作ろう!作るのは脇役ながら妙な存在感を発揮し、主人公と行動することも多いVoronというキャラクター。ずんぐりとしていて、いかにも強そうです。AK104と思われる銃がアイコニック。ゲーム『Escape from Tarkov』の特徴が銃のカスタマイズでもあるので、銃の造形はこだわりたいところです。もちろん、内部機構まで作り込むのはNGですので、あくまでハリボテ。絶対に実銃のような使い方はできない設計にしていますし、そもそも容易に再現することも不可能ですので予めご了承ください。銃の造形に使用するソフトは「Fusion360」という無料(個人利用に限る)のCADソフト。以前の『ちびロボ!』造形記事でも使用しましたが、今回はもう少し詳しい作り方について解説していきましょう。Fusion360の使い方を一言で表すと、「物体の一部分をスケッチして、任意の長さを押し出して立体化する」だけです。AKより外観がシンプルなM1911のスライド(上の動く部分)を例に作り方や考え方の基礎を説明してみましょう。筆者は銃の設計では1/10スケールで制作しています。ですので、まずはM1911の目安となる長さを決定していきます。また、造形の際は見本や参考になる立体物が手元にあると非常に役立ちます。可能ならば上下左右斜めの写真を撮っておきましょう。写真を参考にスケッチ(平面データを作成)し、それを押し出し(高さを設定)て立体にします。これが「物体の一部分をスケッチして、任意の長さを押し出して立体化する」ということで、基本的にはこの動作の繰り返しで造形していきます。M1911の上面は独特の曲面となっています。そこで、写真をもとに削りたい部分を押し出して曲面を作りましょう。ここでも「物体の一部分をスケッチして、任意の長さを押し出して立体化する」動作を使用しています。前の方も同様ですが、曲面に更に曲線が加わっています。ここでは押し出しつつ、その押し出しの動作に曲線を加える必要があります。そこで、スケッチで押し出しに加えたい曲線を描き、「スイープ」使って曲げながら押し出していきました。基本は「押し出しで立体を作る」の繰り返しですが、押し出した立体を複製し、立体を削るといった工夫も大切です。工程が一気に短縮でき、時間が節約できます。上述の動作は滑り止めのような、繰り返しパターンを入れる際にも有効です。作った立体を複製し、複数の立体同士を削りとることで、滑り止めを作っていきました。完成!こうした基本動作の繰り返しでM1911のスライドを作ることが出来ました。AKの制作も基本的には変わりません(部品が多いので若干複雑ですが)。基本動作の繰り返しで制作しています。デジタル造形の何よりの利点は部品を使いまわせるという点。サイトやレーザーデバイス、グリップやライトは全て別部品となっており、新たに銃を作った場合でも簡単に付けられます。もちろん、これらのデータはミニチュア用なのでデフォルメは欠かせません。最終的には3Dプリンターで出力するので、一体化しても違和感の無い部分は一体化しています。例えば、上記のEOTechサイトはレンズの覆いが別パーツとなっていますが、筆者は一体化して造形しています。<cms-pagelink data-page=”2” data-class=”center”>次ページ:いよいよ3Dプリンタで立体化!気になる出来映えは?</cms-pagelink>Zbrushでフィギュアを作ろう!いよいよVoronを作っていきます。使用するのは「Zbrush」という造形用のソフト。知らないうちにゲーマーもお世話になっているのをご存じでしょうか。というのも実は、ゲームのキャラクターモデリングに使われる場合が多いツールなのです。紹介されている使用例でもフロム・ソフトウェア(DARK SOULS、SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE)やユービーアイソフト(ファークライ6)、プラチナゲームズ(NieR:Automata)、とゲーマーならば絶対にお世話になっている有名タイトルばかり。ただ、実は筆者はこのソフトを使ってフィギュアを制作するのは2体目。それも、本格的に勉強し始めたのは昨年の12月下旬と、あまり慣れていません。(そもそも、今回のVoronも練習用に作ったらなぜか編集部の目にとまって記事を書くことになっていた……)ですので、「素人が言ってら」くらいの気持ちで読んでください。まずはヘッドから作っていきます。あらかじめ用意されている素体ヘッドのサブディビジョンレベル(ポリゴンの粗さ)をレベル1にし、粗くします。Moveブラシを使い、粗い状態で大まかな形を作りつつ(粗い方がポリゴンが大胆に動いて作りやすいのです)徐々にサブディビジョンレベルを上げて劇中のVoronに近くなるようにしていきます。ここで気を付けたいのが、実際に立体にした時の立体感。ミニチュアは少し大げさに凹凸を付けないと、のっぺりとした印象になってしまいます。服はマスキングしてからサブツール→抽出→厚さを設定→抽出で大まかな形を作り、襟やフードはPolySphere(球体)をMoveブラシで歪めながら作っていきました。ここで手や銃もZbrushのサブツール(部品)に入れ、全体を合わせていきました。キャップや手袋も造形していきます。これらはMoveブラシとStandardブラシを組み合わせた、非常に初歩的な造形方法で制作しています。あらかじめFusion360で作っておいたComTac(ヘッドセット)をZbrushに入れ、顔に合わせていきます。また、立方体を縮めて、プレートキャリアの土台を作っておきました。間違い探しのようですが、PolySphere(球体)をMoveブラシで歪めてリュックを造形。肌色にしているのは色を変えることで立体感を新鮮に把握するためです。さらにシワや縫い目の掘り込みを入れたら、サブツールの結合→表示結合から、全ての部品を結合した造形物を作ります。最後の仕上げとして、Zプラグインからデシメーションマスター→プリプロセスでデータ量を削減する準備をします。プリプロセスが終わったら、デシメーションマスター→デシメートでデータを「軽く」していき、造形完了です!Zbrushで作ったデータはChituboxというソフトで3Dプリント用に加工していきます。これは『ちびロボ!』の記事でも説明しましたね。データの準備が完了したら、いよいよ現実世界に呼び出していきます。使用するのは画像左のElegoo Mars3という3Dプリンター。今回は0.02mmの層を積み重ねて出力していきます。待つこと約5時間……ついに現実世界に召喚できました!ただし、0.02mmの層を積み重ねているので、一見綺麗に見えても、実は凸凹しています。ですので、サーフェイサーを吹き、やすりで表面処理をして……立体化完了!筆者の手と比べてサイズ感が分かるかと思います。(約1/10スケール)自分の好きなコンテンツを立体化し、手元に置いておく。世界に一つだけの立体物を作る行為は、素晴らしく上質な体験をあなたに提供してくれます。最近は3Dプリンターの値段も下がり、無料の造形ソフトもあります。ぜひ、皆様も自分の好きな物を立体化してみてはいかがでしょうか?さて、ここまで「Escape from Tarkov. Raid.」よりVoronの制作をお届けしてきましたが、本来であればここから塗装の工程が始まります。また、現実世界で実際に見てみると、もう少しディティールを彫り込んだ方が良かったな…とか、シワの造形が少し不自然だな…と反省点も多いです。反響が大きければ、さらなる造形のブラッシュアップに加え、塗装も記事にできるので、ぜひ拡散・コメントをよろしくお願いいたします!あまり反響がなく今後の記事化がなくても、塗装する場合は筆者のTwitterで公開していきます!
Game*Spark 大塩