NTTドコモと日産自動車は、神奈川県横浜市において自動運転車両を用いたAI配車サービスの実証実験を9月21日から開始する。今回、報道陣向けにその車両が公開された。
実証実験は、ドコモと日産により実施されるもの。横浜みなとみらいや中華街といったエリアで自動運転車両によるオンデマンド配車サービスで、一般モニターおよそ200人が参加する(募集は終了済み)。これまでに行ってきた同種の実証に比べても、乗降地点や座席の増加などに加えて、車両待機所の増加による待ち時間の減少といった点で進化した。
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日産の自動運転交通サービス「Easy Ride」とドコモの「AI運行バス」を組み合わせたもの。実際に使う際は、Webアプリ上から予約することになる。手順としては「予約する」ボタンから乗車・降車位置を選択。その後、乗車の時間を選べば、予約は確定できる。最大乗車人数は3人まで。身長110cm以下の子どもは乗車できない。
画面に従って乗車の手続きを済ませていく乗車ポイントについたら赤いボタンを押そう車両が到着したら、車両のドアに記載のコードを入力することで、ドアが開き乗車できる。音声ガイダンスに従って準備すれば発進できる。
コードを入力するとドアが開く音声ガイダンスに従ってシートベルト装着。「GOボタン」を押すとドアが閉まり発進する運転席には人の姿があるが、安全のための措置で基本的に操作はせず、利用者もなにか会話を交わす必要はない。今回の実証実験では、封鎖されていない公道を一般車とともに走行する。実証実験の開始に先駆けて実際に乗車したところ、運転席を見なければ普通に人が運転しているのと錯覚するほど自然な走行感覚だった。
3列目左側のシートから見た車内正面のディスプレイ。車両のセンサーやルート情報、運転席の様子などが確認できる車内にはカメラがあるがこれは安全上の理由という途中、車線をはみ出して渋滞の最後尾で停車している一般車がいたものの、しっかりそれを認識して減速する動きも見られた。せっかちな人の運転よりも安全そうである。特に、信号整理されている交差点では、右左折時に歩行者がいなくても減速するあたり、不安なくリラックスして乗車できた。
今回の実証に用いられる仕組みは、ある程度の急な割り込みも考慮した仕組みが用意されており、実際に割り込んでくる車両はもちろん、割り込みが起きそうな周辺の状況も認識して走行しているという。
車内に設置されている大型ディスプレイでは、行き先や到着予想時刻などルート情報に加えて、車両のセンサーが読み取った情報を確認できる。右下には運転席を捉えたカメラがあり、人の介入がないことがはっきりと見てとれる。
横から別の車両が出てきてもしっかり停車した唯一、発車・停車時に人がシフト操作するが、これは車両側がその部分の自動操作に対応していないことによるものだ。
実験に用いられる車両は、日産の電気自動車である「e-NV200」をベースとしたもの。居住空間などから選定されたという。車両の正面や前後バンパーなどに多数のカメラやレーダー、スキャナーを搭載。これにより、車線変更や信号を認識し、人の介入がなくとも設定した目的地へ自動で送り届けてくれる。
これまでの自動運転車の場合、ルーフにセンサー類が取り付けられていることが多かったが、今回の実験に用いられる車両はすべて車内やバンパーなどへ埋め込む形で搭載されており、一見すると普通の自動車と変わらない姿だ。
搭載されるカメラ、レーダー、スキャナー類の一部汎用品を組み合わせていたという従来の同種の車両と異なり、車載用として設計されたハードウェアで構成されていることが特長という。
車両の管制システムは、すでに商用利用の実績もあるドコモのAI運行バスに今回のためにいくつかの機能を追加したもの。
管制オペレーターがみる画面車両ごとのバッテリー残量などが表示される。マップには車両位置が映し出される。赤は配車停止中、黄色は空車だという乗車人数の合計や現在乗車中の人数がわかる機能など、もともと備えられていたものに加えて、無人を想定した自動運転車両を管理する機能がある。ネットワークの受信状況やテレメトリーのほか、今回のe-NV200は電気自動車のため、バッテリーの残量も管制するオペレーターから確認できるようになっている。
もし、車両側のバッテリー残量が少なくなっていると予約を受け付けなくなるという。下の写真のように1台ずつの情報を表示させることも可能。予約を受けたルートの情報も確認できるようになっている。
商用サービスとしてすでに運用されているAI運行バスの仕組みを用いているのは、現用のサービスの今後の展開を見据えたもので、自動運転車をどう管理すればいいのかという部分を確認する意味合いがある。
当初、有人運転車両を管理するものとして設計された仕組みであるため、無人車両の管理にあたってどういう情報が必要になるかと言ったデザインは工夫を重ねたポイントだという。
日産では、この取組を通じてこの種のサービスにどのようなニーズがあるのか、どれくらいの料金設定が適切か、乗降時の場所の間隔はどのくらいが適切なのかといったことを確認したいという。またドコモとしては、実践して初めて分かる運用上のトラブルなどの知見を得ていきたいとしている。
今回の実証実験は、9月21日~10月30日の日・月曜を除いた8時30分~16時に実施される。