GIGAスクール構想とは、文科省が「一人一台端末と高速大容量の通信ネットワークを整備することで、多様な子どもたちを誰一人取り残すことなく、個別最適化された教育によって個々人の資質・能力を伸ばす環境を実現すること」を目指す教育改革のことだ。GIGAとは、「Global and Innovation Gateway for All」の略である。
2019年12月にGIGAスクール構想実現のための予算が閣議決定され、当初計画では2023年までに学校の通信ネットワークと児童・生徒に一人一台端末を整備することになっていた。そこに2020年3月の新型コロナウイルス感染症拡大予防のための休校要請が降りかかった。
ICT環境が整っていた私立校がオンライン教育に切り替えて授業を再開できた一方で、多くの公立校ではなすすべがなく、教育が止まってしまった。これに危機感を募らせた文科省が、計画を前倒しして環境整備に取り組み、今年3月末には全国の自治体への配備が完了した。
筆者の家庭でも、子どもたちが自分のタブレット端末を持ち帰るようになり、練習として朝の会をオンラインで実施するようになった。
一人一台端末が配られ、休校要請があったときもオンラインで授業が受けられる――。
コロナ禍にオンライン授業という選択肢を与える環境整備は、筆者も好意的に受け止めている。だが、自殺があった町田市立小学校の取材を重ねるなかで、次のような声を聞き、いまのような形でのICTの推進は学習に悪影響を与えていると感じるようになった。
「クロームブックで計算ドリルをやっている。先生は、計算はノートに書きなさいっていうけど、みんな書かないで適当に答えちゃっていた」(児童)
「調べて、レポートをつくる授業がよくあるけど、みんなコピペしているから、すぐに課題が終わっちゃう。その間にゲームやったり、好きなこと調べたりしていた」(児童)
「パソコンを使う授業が4時間続くこともあるよ」(児童)
「授業参観に行ったのですが、全員が端末に向かって黙々と入力している様子を見せられました。先生もほとんど発言しないので何をやっているかまったくわからなくて、これが授業なんだろうかと思いました」(保護者)
この小学校は、20年以上前からICT教育に取り組んできた先駆者として知られるA校長がいたICT推進校だ。それだけにICT活用に積極的だったわけだが、子どもが学習に集中できていなかったり、ゲームし放題だった悲惨な状況を聞いて、GIGAスクール構想で「個々人の資質・能力を伸ばす環境を実現する」ことができるのか、大いに疑問を感じるようになった。