「JailBreak(ジェイルブレイク)」とは、“脱獄”を意味する英単語です。コンピュータ、あるいはコンピュータを使ったゲーム機で、メーカーや管理者が意図した方法ではなく、それ以外のインストール方法や、起動ができるような状況にすることを指す言葉として使われています。サポート外の行為であり、基本的にはアンダーグラウンドな用語です。
携帯電話では、アップルの「iPhone」に対してJailBreakが行われ、メーカー未審査のアプリを使えるようにする、といった行為で知られています。携帯電話以外では、主に海外で、PSPやXboxシリーズなどのゲーム機に対して、メーカーが発売したものではないソフトウェアをインストールするための作業のことをJailBreakと呼ぶことがあります。
iPhone 3GS |
「JailBreak」という言葉がもっとも多く使われるようになった「iPhone」や「iPod touch」といった機器では、基本的にApp Storeからアプリケーションを入手しなければならない仕組みになっています。
アプリケーションをApp Storeに登録するには、アップルの審査を受けねばなりません。しかし「ペアレンタルコントロールの問題」「著作権などの問題」などが指摘されたり、あるいは理由が明らかにされなかったりして、審査をクリアできないことがあります。こうして審査をクリアできかなったアプリ、あるいは審査されていないアプリは、iPhoneへインストールできません。しかし、そのようなアプリをiPhoneやiPod touchに登録できるようにするため、JailBreakが生み出されました。
技術的に、JailBreakする方法はいくつかありますが、多く利用されているのは、電源を入れた時に実行する手法や、OSの一部を改変する手法です。改変されたソフトウェアは、CFW(Custom FirmWare、改造ファームウェア)と呼ばれることもあります。こういった手法により、本来保護されるOSのファイルシステムへアクセスできるようにし、非正規の方法でアプリを登録できるようにします。
「JailBreakを行えば、どんなアプリでも使えるようになる」というのは、便利なことのように思えます。ですが、実際はそうとも言えません。
まず、メーカーによって、OSのバージョンアップなどにより、JailBreak対策が取られると、未審査アプリが動かなくなる、といったことが起こりえます。その結果、機器が動かなくなったり、故障したりしても、サポートの対象外になるでしょう。
また、「どんなアプリも使える」ということは、「使いたいアプリが安全かどうかわからない」という可能性もあることになります。つまり、JailBreakという行為がセキュリティホールとなって、iPhoneを危険な状態にすることもあるのです。
具体的な事例として、JailBreakしたiPhoneを対象とした、コンピュータウイルスが存在しています。
海外では、JailBreakしたiPhoneに感染して、壁紙を勝手に変更し、さらに周囲にiPhoneやiPod touchがいないかデバイスを探知して、JailBreak済みの機器が存在すれば感染拡大を繰り返す……というウイルスが確認されています。
この例では、感染拡大を繰り返すだけで他の被害はありませんでしたが、JailBreakを利用したアプリでは、このウイルスが行った「権限昇格」というセキュリティホールを突くことと組み合わせると、iPhone内のさまざまなデータを無許可で読み込んだり、送信したりすることもできます。携帯電話には、ユーザー自身の情報だけではなく、友人や家族、仕事や学校での知人など、周囲の人々の情報が含まれていますから、そういった情報を流出させることも可能になります。そして、実際にiPhone内のデータを盗み出すというハッキングツールも報告されています。
JailBreakという行為が違法かどうか、国内で議論は進んでいません。米国ではアップルが違法と主張し、NGOが反論するといった流れになっています。