3月16日(水)17時5分 ITmedia Mobile
今回の検証で利用するホームルーター「Speed Wi-Fi HOME L11」
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前回の連載でも紹介した通り、UQコミュニケーションズ(以下「UQ」)は2月1日から、通信サービス「WiMAX +5G」の通信制限ルールを一部変更しました。この変更は、au(KDDIと沖縄セルラー電話)を含むWiMAX +5G回線を利用するMVNOサービスにも適用されます。 簡単に新しい通信制限ルールを振り返ると、以下の通りです。・「当日を含まない直近3日間」における通信容量制限の定量的なしきい値の撤廃・変更前は「15GB」という定量的なしきい値があったしきい値に抵触した場合の一律な速度制限の撤廃・変更前は「混雑時間帯(18時頃〜翌日2時頃まで)」に一律制限・変更後はトラフィック(全体の通信状況)を考慮して速度制限を実施 前回は比較的短期間の検証だったこともあり、読者の皆さんの中には「本当に制限されないの?」「光回線やCATV回線の代わりになるの?」という疑問を持っている人もいると思います。そこで、今回の「5分で知るモバイルデータ通信活用術」では、筆者の自宅(東京23区内)において普段使っている光回線をWiMAX +5G回線につなぎ替えて、しばらく普段と“全く”同じように使って検証しみました。 本当に、制限を気にすることなく使えるのでしょうか……?●結論:固定回線代わりになる(思った以上に実用的) いきなり結論から言いますが、さすがに光回線と比べると最大速度(特にアップロードの速度)は遅いものの、毎日15GBを超える通信をしても「速度が遅くなっている……」といったあからさまに不便を感じる場面はありませんでした。固定インターネット回線の代わりとして、十分に使えます。 筆者はUQと直接契約をしているのですが、従来の制限対象時間内に契約者用Webサイトを見ると「通常速度で通信中」となっており、ステータス上は速度制限を掛けていないことも分かりました。 「え、本当に……?」と思う人もいると思うので、どんな感じで検証をしたのか、もう少し詳しく説明します。 検証で使ったのは、ZTE製のワイヤレスホームルーター「Speed Wi-Fi HOME L11」です。Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)対応の無線LANと1000BASE-T(Gigabit Ethernet)対応の有線LANポートを2つ備えています。 (当たり前ですが)L11は単体でもルーターとして使えますが、PC、スマートフォン、タブレット、映像デバイス(Fire TV Stick)、スマートスピーカー……など、普段使っている機器をつなぎ替えるのは面倒ですし、そもそも有線LANポートが足りません。そこで、今回は普段光回線で使っている無線LANルーターのWAN(外部回線)ポートの接続先をONU(光回線の終端装置)からL11の有線LANポートに切り替えて対応しました。 まず「直近3日間で15GB」という条件を満たす前の昼間時の通信速度を「Speedtest.net」で計測しました。結果は以下の通りです。・Ping(応答速度):39ミリ秒・下り(ダウンロード):92.88Mbps・上り(アップロード):11.17Mbps 光回線ほどのレスポンスやアップロード速度は光回線にはかないませんが、ダウンロードの速度は十分です。 その後、あれこれと通信をして「3日間で15GB以上」を満たした後に、従来の規制時間帯に速度を計測した結果は以下の通りです。・Ping:40ミリ秒・下り:84.64Mbps・上り:8.76Mbps ご覧の通り、昼間時とほぼ同じ速度で通信できています。これであれば、後述する一部の使い方を除いて固定インターネット回線の代わりに使えます。Webブラウジング、メールのやりとり、動画のストリーミング再生、スマートスピーカーを使ったスマート家電の操作……など、日常においてインターネットを使う場面で困ることはほとんどありません。●それでも「力不足」を感じる場面はある 自宅の固定インターネット回線の代わりにWiMAX +5G回線を使うのは、思った以上に実用的……なのですが、それでも力不足を感じるシーンが2つあります。 1つは、動画や写真を大量にアップロードする場面です。先述の通り、WiMAX +5Gはダウンロードは速い一方で、アップロードが遅いという欠点を抱えています。クラウドストレージの利用など、多数あるいは大きなデータをアップロードする機会の多い人は、できる限り固定インターネット回線の導入を検討した方が良いと思います。 もう1つは、同時に複数のデバイスでデータ通信を行う場面です。 ある日、筆者のPCではテレワーク、子どものタブレットではオンライン学習のためのWeb会議アプリ、Fire TV Stickでは動画のストリーミング再生を同時に行っていました。ここまでは何の問題もなかったのですが、この状態でスマートスピーカーにコマンドを送ったり、「Radikoアプリ」でラジオのストリーミング再生をしたりしようとするとタイムアウト(応答が遅すぎるためのエラー)が発生することがありました。 要するに、連続した大きめのデータ通信を行っている際に別のデバイスからインターネットにアクセスをしようとすると、応答が異様に遅れてしまうことがあるのです。これは、普段の光回線では発生しない現象です。 ちなみにこの状態でも、Fire TV Stickでのストリーミング再生で「遅すぎてバッファが間に合わない」ということはないのですが、読み込みが突然止まるという事象がまれに発生しました。これも普段の光回線では起こりません。 これらの問題は、WiMAX +5Gの電波環境が良くなって、実効通信速度が改善すれば解消する可能性もあります。ただ、インターネット通信にある程度の「安定性」や「信頼性」を求める場合も、固定回線を導入することをできる限り検討すべきだと思います。 ただし「集合住宅の固定回線が遅くて耐えられない」「建物の物理的な条件で固定回線を導入できない」といった人にとって、WiMAX +5Gは新しい“福音”となったことは間違いありません。●WiMAX +5Gホームルーターは持ち運べる(au契約を除く) WiMAX +5Gに対応するホームルーターのメリットの1つとして、利用場所を問わないというメリットがあります(auの「ホームルータープラン 5G」を除く)。今回の検証では、旅行先にL11を持って行って使う検証も行いました。 ホームルーターは、自宅や事務所での据え置き利用が前提です。そのため、モバイルルーターと比べると本体は大きく、電源アダプターも専用のものを使うことになります。そのため、本来であれば持ち運びには適しません。 しかし、本体が大きい分、モバイルルーターよりも高感度のアンテナを搭載しやすいため、モバイルルーターでは通信が不安定になる場所でも安定した通信を行えることがあります。これはモバイル通信だけでなく、Wi-Fi通信でも同様です。 旅先では、天候不良などによって外出することが難しい状況になることもあります。安定するインターネット接続を得られるとも限りません。滞在先でも自宅と同じようにインターネットを楽しめる環境を整えるべき——これが筆者の持論。だからこそ、ホームルーターを持ち運ぶのです。 UQの「WiMAX 2+」は、都市部以外において通信品質が良くなかったり、そもそも「圏外」だったりすることも良くありました。au 4G LTEエリアも利用できる「ハイスピードプラスエリアモード」を併用すればこれらの問題を解決できるものの、利用した月は1100円の追加料金が掛かる上(契約条件によっては無料)、月間7GBの通信容量制限が設けられています。 それに対して、WiMAX +5Gでは「スタンダードモード」でもau 4G LTE/au 5Gの一部エリアを無料で利用できる他、エリアカバーを広げる「プラスエリアモード」における通信制限がスタンダードモードに影響しなくなりました。スタンダードモードはau 4G LTEのメイン帯域である800MHz帯を利用できないものの、それでもWiMAX 2+よりもエリアが広いため、実用性が増しています。 ホームルーターであれモバイルルーターであれ、WiMAX 2+を利用しているユーザーはWiMAX +5Gにするだけでストレスが相当に減ると思います。乗り換えを前向きに検討してみましょう。