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 大人の「勝ち組・負け組」思考が子どもの可能性を狭めている!?

大人の「勝ち組・負け組」思考が子どもの可能性を狭めている!?

「勝ち組」「負け組」という言葉は、今の現役世代が子どもの頃には馴染みのなかった言葉ではないでしょうか。言葉自体は以前から存在していましたが、格差社会での成功者、逆に経済的に不遇な人などという現在の意味合いで使われる決定的なきっかけとなったのが2006年。当時の小泉純一郎首相の「勝ち組・負け組・待ち組」という発言が注目を集め、同年の新語・流行語大賞にノミネートされた経緯があります。ちなみに、2006年当時「待ち組」が意味していたフリーターは負け組に吸収されました。現在では経済状態の二極化を表す言葉としてメディアや書籍などで広く使用されるようになるなど、「勝ち組・負け組」はすっかり定着した感があります。

二極化が進んだことの影響は子育てにも

この15年の間、バブル崩壊からようやく上向いてきたところにリーマンショック(2008年)が起き、日本では東日本大震災に見舞われました(2011年)。その後は持ち直したものの、2020年来の新型コロナウイルス感染症拡大で世界経済が大混乱に陥っている状況です。前述の2006年の新語・流行語大賞には、既に「格差社会」「下流社会」といった暗い言葉もノミネートされています。その頃から総中流層という概念が崩れ、正規・非正規といった雇用体系や配偶者の有無など、持つ者と持たざる者への二極化が問題視されていたと言えるでしょう。この流れが加速し、決定的となったのが言うまでもなくリーマンショックです。非正規労働者への対応やネットカフェ難民が社会問題になる一方で、何事に対しても勝ち組・負け組」で見る風潮が強まっていきました。子育ての世界でも同じことが起きています。入試を突破しエリートコースを歩む子を育てる親は「勝ち組」であり、受験に失敗したり勉強が苦手な子を持つ親は「負け組」と揶揄されるなど、スポーツのようにハッキリした勝ち負けを意識する傾向が広がっていったのです。勝ち組を目的にする親は、我が子が「誰からもうらやましがられる学歴や経歴を手に入れる」「大企業に就職したり士業や医者になって安定した生活基盤を持つ」「そうした立場にふさわしい相手と結婚する」ような人生を送れるよう、手を尽くします。教育熱が異常に高く、ある一定の偏差値以上の学校しか認めないというのも勝ち組に執着する親の典型と言えるかもしれません。

 大人の「勝ち組・負け組」思考が子どもの可能性を狭めている!?